2012年08月30日

病院内を闊歩する「取り立て屋」

ビジネスの論理が行き過ぎたアメリカ医療の影

日比野誠恵
ミネソタ大学ミネソタ大学病院救急医学部准教授

 突然、ミネソタ大学病院の親会社であるフェアビュー(Fairview)社のCEO(最高経営責任者)から、何やら深刻な文面の電子メールが届きました(おそらくは全職員に)。フェアビュー社とその債権取り立て業務(クレジット・コレクター)を担当していたアクレティブ・ヘルス(Accretive Health)社が、患者に対して恐喝まがいの強硬な支払い要求を行い、患者のプライバシー侵害を含めて法律違反の疑いがあり、ミネソタ州司法長官のローリー・スワンソン氏が調査に乗り出したことを告げる文面でした。この事実はミネアポリスの新聞である「スタートリビューン」にも大きく掲載され(4月25日付)[1]、追って事実上のアメリカの全国紙である「ニューヨークタイムズ」も報道しました(4月29日付)。続きを読む

2012年08月29日

医療ミスの防ぎ方を他業界に学ぶ

あなたの“コミュニケーション”、ちゃんと伝わっていますか?

渡瀬剛人
ワシントン大学救急医学領域
ハーバービュー・メディカルセンターAttending Physician

 7200億円。2006年、エアバス社が目玉製品の2階建て超大型旅客機A380の製造・納入を遅延させたことで負った推計損失額(補償金)はこれほどに上りました[1]。異なる国の工場で分業して機体を製造していたものの、各工場で使用するソフトウェアのバージョンが統一されていなかったため、いざ飛行機を組み立てる段階でうまくドッキングできなかったというのが遅延の理由です。その結果、1機当たり530kmのケーブル、10万本の導線、4万個の接続端末と格闘する日々が始まったのでした。「工場間のコミュニケーションをもっと円滑にしておけば…」と、エアバス社は悔やんでも悔やみきれなかったことでしょう[1、2]。続きを読む

2012年08月21日

「ビビッときた」から、GPを目指しました

小林孝子
ビーンリー・ロード・メディカルセンターGPフェロー

 皆さん、はじめまして。小林孝子です。オーストラリアへ渡って、夢だったGP(general practitioner)となり、ブリスベンで働くこと丸6年。あっという間に過ぎてしまいました。

誰でもすぐに打ち解ける不思議な言葉、“G’ Day,Mate!”
 連載タイトルに入れた“G’ Day,Mate!”を「ジー・デイ、メイト!」と読んだ人は多いと思います。これは「グッデイ、マイ!」と読み、「ハロー」の意味です。“Mate”は“sir/madam”の砕けた言葉で、親しみを込めた言い方です。続きを読む

2012年08月20日

インディアナ州で医療訴訟が少ない理由

医療トラブルを訴訟前に審議するメディカルレビュー・パネルを体験

岡野龍介
インディアナ大学病院麻酔科アシスタント・プロフェッサー

 アメリカでのレジデンシーもフェローシップも終わり、就職先を探していたとき。インディアナ州は住みやすかったけれど、なんだか田舎で退屈だし、東海岸や西海岸にも住んでみたい…。そんなことを考えながらあちこち就職先を当たり、面接にも行きました。なのに、結局はインディアナの病院に就職したのには理由があります。続きを読む

2012年08月08日

厚労省での2年間を経て、「幸せの国ブータン」へ

西澤和子
Jigme Dorji Wangchuck National Referral Hospital新生児科(小児科専門医)
京都大学ブータン友好プログラム(京都大学霊長類研究所)特別研究員

 読者の皆様、はじめまして。西澤和子(にしざわよりこ)と申します。2011年5月から、南アジアに位置するヒマラヤの小国ブータンで、新生児(生後4週未満の赤ちゃん)を専門に診療する小児科医(新生児科医)として働いています。

 人生は計画通りにはいかないものです。帰国子女でもなく大した留学経験もないこの私が、日本から遠く離れた異国の地で、しかもいわゆる開発途上国と呼ばれる国で、現地の医師たちと同じように臨床医として働くことになるとは、自分でも全く想定していませんでした。続きを読む

2012年08月02日

日本全土より広い医療圏をカバーする「空飛ぶ小児集中治療室」

川口 敦
アルバータ大学(Stollery Children’s Hospital)小児集中治療クリニカルフェロー

 先日、私の勤務するStollery Children’s Hospitalに、遠く離れた北極圏のヌナブト準州から5時間もかけて、4歳の男の子が航空搬送されてきました。先天性心疾患術後で、数日前にかぜを引き、悪化してきたとのこと。「今はそれほど重症ではないけれども、心疾患を合併した患者の急変に対応できる施設に搬送したい。他州の子ども病院は満床なので…」という搬入依頼でした。続きを読む