2014年03月19日

自宅もクリニックも工事の遅れにはご用心

馬場恒春
ノイゲバウア-馬場内科クリニック(デュッセルドルフ)

 こちらはドイツ。100年来の厳冬と言われた2013年の寒さに比べれば、この2014年は暖冬だったとはいえ、クリスマスマルクト(Weihnachtsmarkt:クリスマスマーケット)の立ち並ぶ年の瀬に、骨まで凍るようなスケルトンの夏ズボンに夏ブレザー、半袖シャツといういでたちの筆者。やはり当院スタッフも「先生、大丈夫ですか?」ということになります。私のような一世代前の日本人の体型に合う服はまず入手できないドイツですから、秋に寒風吹き渡るリューゲン島を訪れるために(「有休の消化は病院の“義務”」参照)、ダウンコートを取り出しておいたのは結果的に大正解でした。

 なにもこの歳になって寒中トレーニングに目覚めたわけではありません。実は2013年から拙宅の上階にある、本来は宿泊客用に用いている洗面室の改装工事をしていたのですが、その遅れのとばっちりを受けたのです。

遅々として進まぬ「牛歩工事」
 思い起こせば、南西フランスへの2週間の夏休み旅行で留守にしている間に終わるという話で工事を頼んだのが2013年の6月でした。ところが、実際の工事が始まったのは9月に入ってから。2週間どころか、工事はあれやこれやの理由で遅々として進まず、まさかの越年。しかも、3月に入っても工事がすべて終わったわけではないのです。私の冬用衣類のワードローブはちょうどその洗面室の隣にあったため、ホコリ防止用のビニールでがっちりと密封された挙げ句、工事機材や床・壁用のタイルが積み重ねられ、衣類へのアクセスが全くできなくなったのです。

 なぜ、こんな遅れが生じたのでしょう。問題の根本は“超縦割り分業”にもあると思います。(1)床と壁のタイルは内装業者、(2)窓は窓業者、(3)屋根にある窓は屋根業者、(4)照明と電圧の変更は電気屋、(5)洗面台、シャワー、暖房は水回り専門の業者、(6)サウナ室はミュンヘンの工場で加工、そして(7)その組み立ては別の設置業者といった具合です。

 その上、事前に発注したはずの窓は3週間も届きません。サウナの外壁部分は注文と異なり、作り直しでさらに4週間の遅れ。はたまた、建物のエレベーターの偶然の故障と修理に伴うTÜV(技術検査協会。ドイツ政府公認の第三者検査機関で、検査業務の綿密さは有名)の技術審査までに2週間を費やし…。「時間内にできないことは明日以降に」というこちらの標準的な労働スタンスも相まって今日まで至ったのです。

 黙っていると遅れることもあると想定して、最初から強い態度で臨まなかった私たちの認識不足も影響しているのでしょうか。年の瀬も押し迫った2013年12月、遅々として進まぬ工事を見てついに十数年ぶりにキレた私は、責任者に分かるわけはないと知りつつ日本語で滔々(とうとう)と文句をぶつけました。すると、何が通じたのか、翌日からの作業がはかどるようになったのには驚きました。

 実際、あまりの工期の長さに、近隣の方から「中でどんな大工事をしているの?」と聞かれたことは一度や二度ではありません。たかだか一小室の改装にもかかわらず、その下の階にある居間の床には、汚れ防止の工事用カーペットと、物を運ぶために取り外したラセン階段の側面ガラスが置かれたまま。手すり部分のない狭いラセン階段の昇降には、ちょっとしたフィールドアスレチックのような緊張感を伴いました。また、電圧を230ボルトから400ボルトに上げる工事の際は、キッチンや寝室、浴室以外の電気が2週間にわたって使えないというオマケもありました。

 サイズが合わなかったということでまだ取り付けられていない鏡を除けば大方の工事も終わり、一応は使えることになった現在ですが、いまだに電源工事後の居間の壁には穴が空いたまま。さらに、エーッと思うようないくつかの問題点も既に明らかになってきました(写真1〜4)。きれいな出来栄えはさすがドイツというところなのですが、すべてがきちんとなるにはまだしばらく時間がかかりそうです。

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【写真1 大方の工事が終わった洗面室。外観の美麗さはさすがドイツスタンダード。ただし、写真奥の窓は残念なことに、シャワーガラスにぶつかって全部開けることはできません。】

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【写真2 壁がはがれっぱなしで穴の空いた居間の配電盤回り。これで工事完了と言われても…。】

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【写真3 正面の鏡はサイズが合わないとの理由で配線がむき出しのまま。左上部の電動窓は配線のし忘れか、開かずの窓に。】

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【写真4 サウナ内には耐高湿高温スピーカーを装備。スピーカーのケーブルは壁の中まで配線されているものの出口なし。再び壁を壊すか、単なる飾りとして我慢するかが問題です。】

日本のきめ細やかな配達サービスが恋しくて
 このような極端な遅れは珍しいとしても、日常生活の中で物事が遅れたり、予定した日に配達物が届かなかったりすることは、ドイツではよくあることです。配送業者のウェブサイト上で荷物の追跡も一応はできますが、「この日中に届くであろう」以上のことは分かりません。不在にしていた際の再配達も、午前・午後・夜という大まかな時間帯の指定しかできない場合も少なくありません。

 そんなわけで、先日、「午後3時以降に配達予定」というメール連絡を運送会社からもらったときは時代の進歩を感じましたが、受け取りのため3時前に自宅に戻ってみると、何のことはない、午前10時に配達に来たが不在であった旨の不在通知が郵便受けに入っていました。こういうことがあるたびに、やはり日本の宅配サービスはスゴイのだと思わされます。

 そういえば、遅れたというか忘れられたというか、ドイツに来て間もない頃に買ったテレビ(今は化石的存在となったプロジェクション型)は6週間たっても届かず、結局自分たちで取りに行ったことがありました。そのようなわけで、数年後に2台目のテレビ(これも旧世代のプロジェクション型の展示品)を買った際は、すぐに届けるならと粘ったところ、その日は運送係が暇だったのか買った品を積んだトラックが私より早く自宅に着いてしまい、事情を知らずに仕事をしていた家内を慌てさせたこともあります。冷蔵庫や食器洗浄機などが配達予定日の約束した時間通りに届いたときは、むしろ驚いたのを覚えています。

クリニック移転後1カ月間、電話はプリベイド携帯に
 こんなこともありました。渡独して2〜3年した頃、T電話会社の固定電話が突然不通に。T社のカスタマーサービスに問い合わせると、「コンピューター上に私の名前の登録がない」と言います。私の目の前には、契約書のコピーも銀行口座の自動引き落としの記録もあるのにです。その後、すぐに電話は通じましたが、似た経験をした人が周りに少なからずいたので、これも珍しくない出来事なのでしょう。

 2011年1月、本院クリニックをオスト通りへ移転させた際は本当に困りました。わずか1kmの移転でしたが、念のため半年前から電話移転の可否をV電話会社に文書と電話で再三確認し、「全く心配はいらない」という返事をもらっていたのです。ところが、いざ引っ越しが終わってみると、当日はおろか連日の問い合せにもかかわらず1カ月たっても電話が通じません。診療予約の受付はクリニック向かいのテレフォンショップで急遽買い求めたプリペイド携帯電話に頼らざるを得ないという始末でした。埒が明かないままV電話会社による設置をあきらめ、T電話会社に契約替えしてやっと電話が開通したのでした。

 サービス面を前面に押し出して顧客を増やしてきたV電話会社の技術力不足だとか、回線の末端部分を管理しているT電話会社が非協力だったからとか言われたものの、原因は分からないままでした。

 なお、このときのクリニック移転は、本来は前年(2010年)の夏に建物が完成して秋に引っ越しの予定で、その年の夏に発行される日本クラブ(※)の会員名簿の広告にもそのように出していたのです。しかし、建物がほぼ完成したのが12月末、さらにクリニック内装の突貫工事が翌年1月にずれ込み、実際の移転は1月末となってしまいました。引っ越し直前の1月中旬にコンクリートむき出しの現場を見たとき、本当に2月1日から予定通り診療を始められるのか、とても不安になったのを覚えています。

 年が明けての引っ越し作業自体は、医療機器の移動もあったため、ドイツにありながら日系のN通運にお願いし、きめ細やかなサービスとスピーディーな作業で無事に完了しました。

 このような遅れをたびたび経験したおかげで、拙宅の上階の洗面室の全面完成が今春にずれ込んでも驚かないほど、私は悟りの境地に至っています(年末にはキレましたが)。ドイツ首都の新ベルリン空港が当初2011年に完成予定で、工事の遅れから4回も開港が延期され、現時点では2016年以降(?)となってしまったのに比べれば、まだ良しとすべきでしょうか。

 それにしても、つくづく不思議なことに、このように日本に比べて効率が悪い面が少なからず目立ち、労働時間も短いのに、ドイツ経済は好調なのです。いったいどういうことなんだろうと考えてしまいます。

※ 主にデュッセルドルフまたは周辺地域に在住の日本人を対象とした会員制クラブで、様々な文化活動を行っている。現在、個人会員約4000人、法人会員約250社。
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