2010年12月04日

ミネソタの秋の夜長に得る癒し


日比野誠恵
(ミネソタ大学ミネソタ大学病院救急医学部准教授)

 ここ数回、硬めの話題でしたので、今回はワークライフバランスの「ライフ」に焦点を当て、ミネソタ州のアイスホッケー好きが過ごす、秋から冬にかけての余暇の様子を紹介してみたいと思います。

同僚と持ちつ持たれつでイベントを楽しむ

 10月になるとミネソタの秋はいよいよ深まります。紅葉狩りのシーズンが終わると、今後はリンゴ狩りのシーズンです。

 私の家族は毎年、妻の大学時代の親友の家族と連れ立って、ミネトンカ湖の西にあるディアドルフという果樹園へリンゴ狩りに出かけます。この辺りで一番人気のある、適度な甘みと酸味のあるハレルソンやコートランドという品種は、アップルパイを作るのに適しています。ちなみにアップルパイはとても“アメリカン”な食べ物で、アメリカを表現するのに「シボレー、野球、アップルパイ」といわれるほどです。ミネソタ大学で品種改良された、酸味が少なめで甘いハニークリスプという品種は、日本のふじと同じように、そのまま食べてもおいしいです。

 この果樹園の近くには、小動物のいるちょっとした動物園もあり 子どもたちは採ったリンゴをかじりながら遊び回ります。そして、家に帰って家族一緒に夕食を摂りながら、それぞれに夏休みを含めた近況を披露し合い、食後は焼きたてのアップルパイとアップルサイダーに舌鼓を打つのです。

 しかし、今年は、私の同僚のシュミーケン先生が、高校生の双子の娘のホームカミング(出身校に帰って旧交を温めるイベント)があって「どうしてもシフトを変わってほしい」とのこと。仕事をしていてリンゴ狩りには行けませんでした…。これはお互い様ですね。

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【今年のトーナメントでは優勝できませんでしたが、夏のリーグでは8チーム中の第7シードだったにもかかわらず、見事優勝しました!(筆者は前列左端)】


待ちに待ったホッケーシーズン到来!

 そうこうしているうちに、本格的なアイスホッケーシーズンの到来となります。私たちのチームは例によって、9月中旬のプレシーズントーナメントから出場していましたが 今年の成績は1引き分け2敗とあまり振るいませんでした。しかし、どの試合も僅差の白熱した試合で、いつもどおり楽しいひと時を仲間と過ごすことができました。

 ただ、トーナメント1日目、私たちのチームの試合前に60歳代のプレーヤーが試合中に心筋梗塞で倒れ、翌日亡くなったことを後から聞かされました。実は、故人は火曜日の夜に私たちのチームと一緒に滑っているチームのメンバーでした。彼が倒れた場所に私がいたら…と思ったものです。ホッケーが大好きな彼は試合前日も元気に滑っていて、体調にはまったく問題ないように見えたとのこと。「悪くない逝き方かもしれない」と皆でうなずき合いました。

 わが地元は、プロホッケーチームのミネソタ・ワイルドを擁しています。例年は、そのシーズンチケットを購入して8人で分けているのですが、昨年のチームの不振と不況のあおりを受けて、4人がドロップアウトしてしまいました。うちの息子は例年より多くの試合を観戦できると喜んでいますが、こちらの財布にはつらいところです。

 ミネソタ大学のホッケーチームは、1990年代に3度の全国制覇を成し遂げた強豪ですが、この2〜3シーズンは調子が上がらず、今年はヘッドコーチの交代があるだろうといわれています。また、地元のイダイナ高校は昨年のミネソタ州の高校ホッケーのチャンピオンで、今年も連覇が有力視されており、非常に楽しみです。チームの成績は水物なのかもしれませんが、ミネソタのホッケーの盛んなこと、並みではありません。

 この地域の子どもたちは、小さい頃からユースホッケーで頑張っていることが多く、うちの息子もその1人です。彼はまだマイト(7〜9歳)の段階なので、トライアウトもあってないようなものですが、もうすぐスキルによってチームを振り分けられることになります。今は親しい友達と同じチームになるかどうかで一喜一憂という感じです。お父さんたちは真冬になると、子どもたちのコーチングやリンクの氷の維持に大わらわです。


今年のわが子は死神と吸血鬼に

 10月も半ばを過ぎると ハロウィーンの準備に忙しくなります。クモの巣を家中に張り巡らして、コウモリや黒猫の飾りをあしらいます。子どもたちは、カボチャをくり抜いてジャックランタンを作ります。

 そして極め付きは、それぞれに着飾って「Trick or treat!」(お菓子くれなきゃ、いたずらするぞ!)と言いながら近所を練り歩きます。今年のわが子どもたちの扮装は、息子が死神で娘が吸血鬼でした。昨年のスターウォーズの兵隊とピーターパンのティンカー・ベルに比べれば、ちょっとは大人っぽくなったようです。

 かつては子どもたちだけで練り歩いていたようですが、近年では安全に不安があるので、大人が見守って歩くことが多くなりました。昨年のこの時期には、ちょうど日本救急医学会が開かれていたので、「一緒にハロウィーンできなくて残念だったね」と子どもに言われていたのですが、今年は妻と子どもたちと近所の仲の良い家族とで、 2〜3ブロックを歩き回りました。「ゲゲゲの鬼太郎」顔負けの墓場の飾り付けがしてある家や、寒いのでココアを用意している家もあって感心してしまいました。

 ちなみに、アメリカのキリスト教原理主義者の方々は、「ハロウィーン」では“悪魔のお祭り”だということで、「秋の収穫祭」という名前で呼んでいるそうです。少し不思議な感じもします。宗教を理解するのはつくづく難しいと感じます。


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【吸血鬼に扮する娘と死神に扮する息子。ちょっとは大人っぽくなった?】


そして感謝祭、わが家に20人以上を招待

 アメリカでは11月の第4木曜日に行われる感謝祭(サンクス・ギビング)は、独立記念日、クリスマス、新年と並んで4大祝日の一つに数えられています。多くのアメリカ人の家族は、この時期を親族で集まる機会ととらえているので、主要高速道路も飛行場も非常に混雑します。

 わが家も例外ではありません。日本の両親にはちょっと申しわけないのですが、妻方の親族の各家庭がホストを持ち回りで担当し、シカゴ近辺、デラウエア(フィラデルフィアから30分ぐらいです)、あるいはミネアポリスで集まります。今年はわが家がホストを務める上、妻の両親とデラウエアの妹夫婦がわが家に宿泊するということなので、相応の準備でかなり忙しくなります。ただ、逆に自分たちが移動する必要がないので、こと自分の仕事に関する限り、柔軟に予定が立てやすくなります。20人以上の親族が来る可能性があるので、あまり大きくないわが家ではちょっと手狭の感がありますが、そこで交わされる近況報告や様々なゴシップ話が楽しみではあります。

 かくして、ミネソタの秋の夜長は、コオロギの音色に耳を澄ませ、団子を頬張りながら月見としゃれ込む…なんてわけにはいきませんが、まんざら捨てたものでもありません。仕事というものは長く続けられるものであるべきだと考えると、今回紹介したように、家族とのだんらんを大切にできる労働環境はとても大切であるような気がします。実際、救急医療の現場で強いストレスを覚えながら仕事に励む人々は、しばしば癒しを求めているのですから…。
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