2013年10月30日

イクメン医師はアメリカでもヘトヘトです

萩原裕也
サウスダコタ大学家庭医療科アシスタント・プロフェッサー

 私(裕也)は家庭医療研修をミシガン州立大学関連のプログラムで行い、その間の3年をカラマズー(Kalamazoo)という町で過ごしました。

 長女と次女が生まれたのは研修中のことでしたが、当時、妻の万里子は医師業を休業して専業主婦だったため、育児を含む家の用事はすべて彼女に任せっぱなしでした。仕事から帰った後や週末も、勉強しているか寝ているかのどちらか。「なんで私ばかりが子どもの世話をしているの!」と妻からたびたび言われましたが、責められても仕方ない状態でした。

娘たちの送り迎えに合わせて診療時間を変更
 研修を終えてサウスダコタへ移り、勤務形態が研修医時代より楽になってからは、少しずつ育児参加するようになりました。ただ、一昨年からの妻の職場復帰と研修開始に伴って次第に「少し」どころではなくなり、イクメンにならざるを得なくなりました。長女は義務教育のキンダーガーデン、次女もプリスクールへ入園するタイミングでした(※)。

 「朝早く、夜遅い」研修医の妻に代わり、娘たちの送り迎え、夕食の準備、お風呂、寝かしつけなどを、ほとんど私がすることになったわけです。料理はほとんどできなかったのですが、そうも言っていられず、インターネットや料理本のレシピを参考にして取り組んでいます。

 仕事のやり方も大きく変える必要がありました。かつては遅くまで診療しても問題はなかったのですが、今やそうはいきません。娘たちは朝8時までに登園し、長女は園が終わると同じ施設内の学童保育に移ります。次女も長女と同じ施設内のプリスクールに朝から通っています。そのため、娘たちの都合に合わせて自分の外来の診療時間を9〜16時に変えてもらうことになりました。

 娘たちを車で送り届けると、そこから病院まで40分かけて通勤です。娘たちは18時までは学童保育で預かってもらえますが、お迎えが間に合うように、クリニックを遅くても17時には出なければなりません。勤務も終わりに差しかかってくると、妻と連絡を取り合い、どちらかが間に合うように仕事を切り上げます。

 電子カルテには自宅からでもパソコンやiPadなどでアクセスできるので、少しでも早く切り上げたい場合は仕事を持ち帰り、カルテ記載や文献検索などを子どもたちが寝静まった後に行うことにしています。私と妻のどちらも遅くなると分かっている日は、ベビーシッター(nanny)に娘たちのお迎えと親が戻るまでの面倒を前もってお願いしておきます。

 こうした生活を続けていく上で大きなネックとなるのは当直です。子どもが小さくても、当直のノルマを減免してもらうことはできません。私は平日当直が週1回、金曜〜月曜朝までの週末当直が月に1回あります。妻の方は忙しい月では当直が4日に1回あるため、なんとかバッティングしないように私の方の勤務を調整。どうにもやり繰りが付かない時間帯が出てくれば、ベビーシッターをお願いすることになります。

7勤7休、ホスピタリストの勤務体系は共働きにとって魅力的
 娘たちの教育にも気を配っています。特に日本語の習得です。英語で話す方が楽なようで、姉妹での会話は英語を使う傾向にあり、そのつど注意しなければなりません。サウスダコタには日本語補習校などは存在しないため、通信教育の教材を日本から取り寄せて、私がなるべく勉強に付き合うようにしています。夏休みなどの機会には一時帰国して、日本の小学校に体験入学させることも計画しています。

 ほかにもバイオリンやピアノ、ダンスなどの習い事に、ガールスカウト活動。その送迎も加わって大忙しです。

 娘たちが発熱したり病気になった場合は本当に大変。幸いにも、ほとんど病気することなく過ごしてくれていますが、一度だけ勤務中に「娘さんの具合が…」と連絡を受けたことがありました。このような場合は、夫婦どちらかが仕事を抜けて迎えに行くことになります。

 正直なところ、私はもはやヘトヘトになってしまっていて、妻が3年間の内科研修を終える日を待つばかり。研修が終わったら、妻にはホスピタリスト(病棟内科勤務医)になってもらう予定です。ホスピタリストの通常の勤務形態は7 days on/7days off。つまり、1週間働いたら翌週は完全オフなのです。1日の勤務時間は、8時間から最長12時間程度。1年間でほぼ26週だけ働けばよく、シフトを外れれば病院から呼び出されることもありません。共働きの私たちにとってはとても魅力的な条件です。

 さらに、頑張って2〜4週間連続で働けば、その分まとめて休みを取ることができるため、数週間単位で日本へ一時帰国できるようにもなります。このような勤務形態は日本ではまずないと思いますが、アメリカのホスピタリストでは最も一般的です。

 イクメンドクター生活はまだまだ続きますが、妻をはじめ、家族、友人、ベビーシッターなど多くの人の協力があってなんとかやっていけています。柔軟な働き方を認めてくれるアメリカのサポートシステムにも感謝しなければなりません。

※ kindergartenもpreschoolも日本語では「幼稚園」と訳されるが、前者はほとんどの州で義務教育とされている。
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