2013年03月21日

画像検査を断るのが画像診断医の仕事?

林 大地
ボストン大学放射線科リサーチインストラクター

 イギリスのNHS(national health service)の財政が逼迫していることは、これまでの連載で書いてきた通りです。これに関連して、前回は医療通訳・翻訳サービスについて紹介しました。今日の医療において、ほかに医療費を圧迫するものと言えば、画像検査が挙げられます。続きを読む

2012年12月13日

医療通訳は税金の無駄遣い?

林 大地
ボストン大学放射線科リサーチインストラクター

 「Dr. ハヤシ、次の患者さんは英語を話さないので、息子さんが通訳のため同伴してくれます」と、受付係が笑顔で私に言いました。「新患者」と書かれた患者ファイルには、白紙のカルテがペラッと1枚差し込んであるだけでした。すぐにドアをノックする音がして、黒人の男性2人が部屋に案内されてきました。患者のアブドゥルさん(65歳)と、息子のモハメドさん。2人とも2mはあろうかという大男です。続きを読む

2012年10月22日

医師たる者、「労働者階級の言葉」を使うべからず

でも、分からなければ診療できない

林 大地
ボストン大学放射線科リサーチインストラクター

 あるとき、交通事故で運ばれて来た50歳の白人男性の担当になりました。この男性はバスの運転手でした。シートベルトをせずに仕事でバスを運転していたところ、複数台による玉突き事故に巻き込まれたとのことでした。

 “Do you have any pain?”という私の質問に対する答えは、「アーイ、ドック、ミゴッパインアールオゥヴァミネックエンベック」。一度聞いただけではよく分からず、再度繰り返してもらいましたが、それでも分かりません。続きを読む

2012年06月20日

イギリス医師会が新年金制度に抗議のスト決行へ!

怒れる医師たち、一歩も退かない政府

林 大地
ボストン大学放射線科リサーチインストラクター

 2012年6月21日(木)、イギリス全土で医師によるストライキの決行が予定されています[1]。イギリスの医師による大規模なストライキは1975年以来です。当時のストライキは、大学附属病院および関連病院の勤務医によるプライベート医療行為を禁止する制度の導入と研修医給与の実質減額に対する抗議のために行われました。結果として多くの病院が一時閉鎖される事態となり、最終的には政府が医師側の要求を呑むことで騒動が収まりました。続きを読む

2012年05月30日

救急車を20分も足止めする跳ね橋が呼んだ悲劇

ロンドン中心部から46kmの「医療過疎島」にて

林 大地
ボストン大学放射線科リサーチインストラクター

 イギリスにおける研修医としての最後の職場はケント州のメドウェイ病院(Medway Maritime Hospital)でした。2005年12月から2006年2月までの産婦人科ローテーションでしたが、当時体験した医療過疎の島での産婦人科医療について書こうと思います。続きを読む

2012年05月01日

「異邦人」が日本の医師国試を受けるまで

林 大地
ボストン大学放射線科リサーチインストラクター

 イギリスで医学教育を受け、卒後の必修初期研修を終えた私には、その後に取りうる進路が2つありました。イギリスで臨床研修を続けて専門医の資格を取るか、帰国して日本の医師国家試験を受験し、日本の医師免許取得を目指すか―。「日本人である以上、祖国でも医師として働きたい」と思い、11年ぶりに本帰国する決断をしました。

 前回と話は前後しますが、「海外医学校を卒業した日本人」が日本の医師国試の受験にこぎ着けるまでを、今回はご紹介したいと思います。続きを読む

2012年03月23日

「24時間勤務など、全く苦になりません!」

KUROFUNetとの出合いからアメリカのレジデンシーポジションを獲得

林 大地
ボストン大学放射線科リサーチインストラクター

 前回はイギリスの研修医マッチングについて書きましたが、今回は私がアメリカで体験したばかりのレジデンシー応募プロセスについてご紹介します。アメリカでは海外医学校卒業生(international medical graduate;IMG)としての挑戦であり、希望する放射線科レジデンシーのポジションを獲得するまでには大変な時間と労力を要しました。続きを読む

2012年02月22日

「面接なし、経費ゼロ」の研修医マッチング

林 大地
ボストン大学放射線科リサーチインストラクター

 イギリスの医学生はどのようにして卒後のポストを得るのでしょうか? 実は、日本やアメリカと同様に「マッチング」で就職先が決まります。私は実際にイギリス、日本、アメリカの3国で研修医マッチングに参加して卒後研修プログラムに応募し、仕事を得るという体験をしてきました。そこで今回は、イギリスの研修医マッチングシステムについて書いてみたいと思います。続きを読む

2012年01月13日

担当科の仕事が忙しいほどうれしい夜勤

独特の夜勤制度に見るイギリス式合理主義とは

林 大地
ボストン大学放射線科リサーチインストラクター

 前回の結びで「次回は、医師の夜勤制度導入に関連して生じた、イギリスの医師の勤務体系にかかわるもう一つの変化についてご紹介します」と書きましたが、それはいったいどのような変化だったのでしょうか。端的に言えば、夜勤中も日勤中と同じく、「勤務時間内は常に働いていること」を求められるようになったことです。続きを読む

2011年11月28日

「1日夜勤」と「1週間夜勤」、どっちを選ぶ?

林 大地
ボストン大学放射線科リサーチインストラクター

 私は、イギリスで約1年半臨床医として働いてから日本に帰国し、日本の医師国家試験合格後に東京慈恵会医科大学附属病院で2年間の初期臨床研修を行いました。そのときにまず戸惑ったのは、夜間“宿直”制度です。仮に“宿直”中に一睡もできないほど忙しかったとしても、翌日に一切休みは与えられず、通常通りフルに勤務しなければならないことでした。続きを読む

2011年09月26日

「5時になったら帰れ」と言われても…

林 大地
ボストン大学放射線科リサーチインストラクター

 前回までイギリスにおけるナショナル・ヘルス・サービス(national health service;NHS)医療とプライベート医療について紹介してきました。今回は、私がNHS病院の勤務中に体験した、医師の労働形態をめぐる経営サイドと現場医師の対立について書きます。続きを読む

2011年09月20日

待たずに検査したいなら、プライベート医療へどうぞ

林 大地
ボストン大学放射線科リサーチインストラクター

 前回はイギリス医療の根幹とも言えるナショナル・ヘルス・サービス(national health service;NHS)について書きましたが、今回はNHSと併存する「プライベート医療」を紹介します。続きを読む

2011年08月22日

ルーチン検査・手術は18カ月待ち!

―イギリス医療を支えるナショナル・ヘルス・サービス(NHS)

林 大地
ボストン大学放射線科リサーチインストラクター

 今回は、この連載のタイトルの一部にもした「誰もが無料で受けられる」というイギリスの医療制度について、私の医学生・研修医時代の経験を踏まえて紹介したいと思います。続きを読む

2011年06月14日

医師国試がないイギリスの、タフな卒業試験

林 大地
ボストン大学放射線科リサーチインストラクター


 私は東京生まれの日本人ですが、幼少時を含めると合計11年間イギリスで暮らしていました。医学教育をイギリスで受け、卒後初期研修を終えてから帰国し、日本でも医師として働きましたが、医学教育や医療制度だけでなく、医師の働き方や考え方がイギリスと全く異なっていたので大きな驚きを覚えました。その後、アメリカの医療にも触れてみて、アメリカもまたいろいろな面で違っていることが分かりました。

 医療について考えるとき、私の根幹にあるのはイギリスの医療です。その視点から、私の経験に基づいたイギリス医療を紹介するとともに、日本およびアメリカの医療について、私が学生・医師としての経験から感じたことをお伝えしたいと思います。続きを読む