2014年02月25日

エビデンスだけでマネジメントは語れない

マネジメント界の異端児ミンツバーグの教え

渡瀬剛人
ワシントン大学救急医学領域
ハーバービュー・メディカルセンターAttending Physician

 臨床医にとってマネジメントは遠い世界の話。医師は臨床に純粋に専念して患者に尽くせばいい。かつて私はそう思っていました。しかし、本当にそうでしょうか?

 救急医であれば、荒れ狂う救命救急センターの管理。指導医であれば、様々なレベルにある研修医の指導。診療部長であれば、折り合いが付かない他科との交渉。実は、これらの行動はマネジメントそのものです。毎日こなしている業務そのものが、知らずのうちにマネジメントになっていたりします。「マネジメントなど学んだことのない自分が、そんなことをやっていていいのか?」と悩んでしまうのは、私だけではないと思います。続きを読む

2013年05月14日

駅伝に学ぶ、スタッフの「社会的手抜き」の減らし方

渡瀬剛人
ワシントン大学救急医学領域
ハーバービュー・メディカルセンターAttending Physician

 卒後3年目に働くことになった(日本の)病院の救急科は、常勤医は私、同期、部長の3人のみという小所帯でした。その病院を私が去る頃には10人近くにまで拡大していましたが、科全体としての動きは何となくスローになったように感じられました。自分の気持ちも緩んで自己嫌悪に陥っていた時期でもあり、「卒後5年目とは、このように感じる時期なのか」と、そのときは勝手に納得していましたが…。

 医療組織や医療チームの規模が大きくなったとき、そのメンバーのパフォーマンスにはどのような影響があるのでしょうか? チーム競技である「駅伝」も引き合いに出しながら、考えてみたいと思います。続きを読む

2012年12月03日

「先生、入院を決めるのはあなたではありません」

渡瀬剛人
ワシントン大学救急医学領域
ハーバービュー・メディカルセンターAttending Physician

 以前働いていた病院で、74歳の女性が回転性めまいを主訴に救急外来を受診してきました。年齢のことも考え、様々な検査を施行しましたが、特に大きな異常は見つかりませんでした。末梢性のめまいということで様子を見ていましたが症状が良くなる気配がないので、入院のことを本人とその家族に話しました。続きを読む

2012年08月29日

医療ミスの防ぎ方を他業界に学ぶ

あなたの“コミュニケーション”、ちゃんと伝わっていますか?

渡瀬剛人
ワシントン大学救急医学領域
ハーバービュー・メディカルセンターAttending Physician

 7200億円。2006年、エアバス社が目玉製品の2階建て超大型旅客機A380の製造・納入を遅延させたことで負った推計損失額(補償金)はこれほどに上りました[1]。異なる国の工場で分業して機体を製造していたものの、各工場で使用するソフトウェアのバージョンが統一されていなかったため、いざ飛行機を組み立てる段階でうまくドッキングできなかったというのが遅延の理由です。その結果、1機当たり530kmのケーブル、10万本の導線、4万個の接続端末と格闘する日々が始まったのでした。「工場間のコミュニケーションをもっと円滑にしておけば…」と、エアバス社は悔やんでも悔やみきれなかったことでしょう[1、2]。続きを読む

2012年05月16日

患者を上手に待たせる秘訣をディズニーランドに学ぶ

渡瀬剛人
ワシントン大学救急医学領域
ハーバービュー・メディカルセンターAttending Physician

 お腹を空かせたあなたは、ようやくレストランにたどり着きました。奥ではウェイトレス数人が談笑していて、なかなかテーブルに案内してくれません。咳払いをして自分の存在に気づかせ、テーブルに座ることができました。続きを読む

2012年02月06日

救急の長い待ち時間をトヨタ方式で改善

渡瀬剛人
ワシントン大学救急医学領域
ハーバービュー・メディカルセンターAttending Physician

 日本の医学部6年生だった2002年、私は当時のポリクリニック(今で言うbedside teaching)の一環として、アメリカのボストンとチャペルヒルで4カ月間を現地の医学生として過ごし、その経験が人生の大きな転機となりました。アメリカで体験した医学生とレジデントの教育、そして救急医療は、当時の日本では出合えなかったもので、「自分もこの世界に身を置いてみたい」という目標が芽生えてきたのです。続きを読む