2012年10月10日

医学研究からビジネスを立ち上げる方法

市瀬 史
ハーバード大学医学部アソシエイト・プロフェッサー
マサチューセッツ総合病院麻酔集中治療科・麻酔医

 医学研究に限らず、大学などの教育機関における研究活動は、一般的にはお金になりません。私が勤務しているマサチューセッツ総合病院(MGH)は、アメリカでも最大の医学研究のメッカです。しかし、そんな場所でも、大方の研究者の収入は臨床医に比べて少なくなります。

 研究資金はどれだけ高額を獲ってきても、研究費用と研究スタッフの給与に消えてしまいます。研究者自身の給与を高くし過ぎると研究資金を圧迫し、研究計画の遂行を妨げますから、多額の給与を取るわけにはいかないというジレンマがあります。続きを読む

2012年01月05日

「白衣を着た歯車」にならないために今できること

市瀬 史
ハーバード大学医学部アソシエイト・プロフェッサー
マサチューセッツ総合病院麻酔集中治療科・麻酔医

 前回も書きましたが、私の好きな英語表現の一つに“make a difference”というフレーズがあります。直訳すれば「違いを作り出す」ということになりますが、ニュアンスとしては、「何か大きな仕事をして現状を変える、改革する」という方がぴったりはまると思います。医師・医学者のように高等教育を受けて専門職(profession)に就いた人は、誰もが「(自分の力で)現状を変えたい」という願いを心に秘めているのではないかと思います。続きを読む

2011年08月25日

「公式」なき時代の若人に贈る3つのアドバイス

市瀬 史
ハーバード大学医学部アソシエイト・プロフェッサー
マサチューセッツ総合病院麻酔集中治療科・麻酔医

 このブログの影響か、最近、日本の医学生や若い医師たちからキャリアの相談を受ける機会が多くなりました。細かい内容はそれぞれ違いますが、だいたいのところ、日本での医師・医学者としての将来について不安を抱いている人が多いようで、私のように「アメリカに臨床留学して医師・医学者としてやっていくにはどうすればいいか?」という質問をよくされます。続きを読む

2010年08月24日

分かりやすいプレゼンの7つの鉄則

市瀬 史
ハーバード大学医学部アソシエイト・プロフェッサー/
マサチューセッツ総合病院麻酔集中治療科・麻酔医


先日、日本で開催された2つの医学・生物学関係の学会に出る機会がありました。1つは日本の学会でほとんどの発表は日本語でしたが、もう1つは国際学会で英語を使って発表が行われていました。どちらの学会でも、それなりに学問的に興味深い発表があり、勉強になることもありました。しかし、発表者によって発表の巧拙に大きな差があるのには、いつものことながら驚かされました。続きを読む

2010年04月20日

オリンピックの金メダルと医師のキャリア


市瀬 史
ハーバード大学医学部アソシエイト・プロフェッサー/
マサチューセッツ総合病院麻酔集中治療科・麻酔医



 バンクーバー冬季オリンピックが閉幕し、日本は銀メダル3つと銅メダル2つで、金メダルはゼロという結果に終わりました。私は日本のアイススケート発祥の地である諏訪湖の畔、長野県下諏訪町に生まれ、大学時代は競技スキーに明け暮れた関係上、ウィンタースポーツに対する思い入れは人一倍深いものがあります。
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2010年04月02日

あなたは世界が変化する速度を意識していますか


市瀬 史
ハーバード大学医学部アソシエイト・プロフェッサー/
マサチューセッツ総合病院麻酔集中治療科・麻酔医


 興味深い統計があります。ある技術が、発明されてから5000万人に使われるようになるまでにかかった時間を比べたものです。それによれば、ラジオは38年、テレビは13年かかっています。ところが、インターネットは4年、iPodは3年、そしてソーシャル・ネットワーキング・サービスのFacebookはわずか2年で5000万人に普及しています。

 この話は、You Tubeに投稿された“Did You Know;Shift Happens”というビデオから抜粋したものです。もともとは2006年にコロラド州のAparahoe High Schoolの職員会議で行なわれたプレゼンテーションがインターネット上に流出したものですが、興味深い統計と推測に満ちています。個々の統計の内容もさることながら、私が一番興味を引かれたのは、世界が変化していく速度そのものです。
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2010年02月03日

96歳までバリバリ現役の秘密


市瀬 史
ハーバード大学医学部アソシエイト・プロフェッサー/
マサチューセッツ総合病院麻酔集中治療科・麻酔医


 昨年、マサチューセッツ総合病院(MGH)で私のオフィスの隣にいた、ある医師が亡くなりました。彼の名前はポール・ザメスニック(Paul C.Zamecnik)。96歳で現役の研究者でした。亡くなる2〜3週間前にオフィスの前で立ち話をしたのですが、そのときも背筋を真っすぐに伸ばして颯爽としていらしたので、亡くなったことが今でも信じられません。ご冥福をお祈りしたいと思います。続きを読む

2010年01月09日

人を育てる、メンタリングというシステム


市瀬 史
ハーバード大学医学部アソシエイト・プロフェッサー/
マサチューセッツ総合病院麻酔集中治療科・麻酔医



 メンタリング(mentoring)とは、特定の領域において知識、スキル、経験、人脈などの豊富な人(メンター)が、そうでない人(メンティ)に対して、自立させることを意識しながら一定期間継続して行う支援行動を意味しています。続きを読む

2009年11月05日

医者として成功する法則

市瀬 史
ハーバード大学医学部アソシエイト・プロフェッサー/
マサチューセッツ総合病院麻酔集中治療科・麻酔医)


 マルコム・グラッドウェル(Malcolm Gladwell)という米国の社会心理学者・作家が書いた『Outliers :The Story of Success』という本がアメリカでベストセラーになっています。邦訳版の『天才! 成功する人々の法則』(勝間和代訳、講談社)も最近出版されたようですから、お読みになった方もいらっしゃると思います。続きを読む

2009年09月29日

上海で医者のキャリアについて考えたこと


市瀬 史
ハーバード大学医学部アソシエイト・プロフェッサー/
マサチューセッツ総合病院麻酔集中治療科・麻酔医)


 医者という仕事は、本当の意味でのProfessionだと思います。医者になることそのものがキャリアで、それ以上でもそれ以下でもあり得ないのかも知れません。

 15年ほど前に亡くなった私の父は、外科医として地域の住民の健康と安全を守るという崇高な使命のために一生を捧げた人でした。周囲から慕われ尊敬されていた父親は、子ども心にも私の誇りでした。今となっては本人がどう思っていたかを知るすべはありませんが、私自身が自分のキャリアの中ごろに達した今、父の医者としてのキャリアは大変充実したものだったと思います。特別意識はしていませんでしたが、その父の背中を見て育ったことが、兄と私が医者を志した要因の一つであることも疑う余地がありません。
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