2013年08月15日

徴兵を抽選で決めたベトナム戦争と臨床研究

1970年代の医療ビッグデータ

永松聡一郎
ミネソタ大学呼吸器内科/集中治療内科クリニカルフェロー

 1969年12月1日、ワシントンD.C.で行われた、とある抽選会に全米が釘付けとなっていました。その模様はテレビやラジオで中継され、透明な抽選箱の中に366個のカプセルが入れられていく様子が報じられています。政府代表を務める下院議員が、神妙な面持ちで最初のカプセルを取り出し、中に入っていた紙を読み上げます。続きを読む

2013年06月20日

莫大な医療資源が使われる中、集中治療医の役割は?

医師の需給予測を考えるVol.4

永松聡一郎
ミネソタ大学呼吸器内科/集中治療内科クリニカルフェロー

 私がミネソタ大学の集中治療室(intensive care unit;ICU)で働いていた頃、ICUは“1泊30万円のホテル”にたとえられていました。患者さんの入院費用が1000万円を超えることはよくあること。症例検討会では1億円を超える事例が議論の対象となっていました。

 アメリカでは毎年約500万人がICUに入院し、約3割のアメリカ人は亡くなる直前1カ月間にICUを利用します[1]。約8割のアメリカ人は患者として、あるいはその家族や友人として、生涯の間に一度以上はICUに接します。ICUでの医療には高額の費用がかかり、その額は病院医療費の3割、国内総生産(GDP)の1%、9兆円以上に及ぶと言われています。続きを読む

2013年02月20日

最も重篤な患者を診る専門医が不足している!

集中治療医不足を明らかにしたCOMPACCS研究
医師の需給予測を考えるVol.3

永松聡一郎
ミネソタ大学呼吸器内科/集中治療内科クリニカルフェロー

 「面会謝絶」と記された札の下で、口の中にチューブを入れられた患者さんが、生命維持装置に囲まれて静かに眠っている―。集中治療室(ICU)は多くの人の目に触れることがない場所ですが、病院の中で最も重篤な患者が集う場所です。

 生死の境をさまよう重篤な状態なのだから、誰しもがベテランの専門医の治療を受けたいと思うでしょう。しかし残念なことに、アメリカでは集中治療専門医(intensivist)が不足しており、重症患者の半数以上は専門医による治療を受けていません。集中治療専門医は今後も不足し続けるだろうとされており、そうなることは1990年代から警告されていました。続きを読む

2011年02月23日

医師の需給予測を考える Vol.1

アメリカの医師需給、2025年に12.4万人が不足?


  永松聡一郎
  (ミネソタ大学呼吸器内科/集中治療内科クリニカルフェロー)


 わが国では昨今、医学部の定員を増やすべきか、医科大学を新設するべきかという議論が行われております。ところで、わが国にはどれだけの医師や医療従事者が必要なのでしょうか?続きを読む

2010年11月25日

アメリカの医療保険の不思議 Vol.2

  医療費の自己負担の有無で健康状態は変わるか
  自己負担率を0〜95%に割り付けたRAND医療保険実験

  永松聡一郎
  (ミネソタ大学呼吸器内科/集中治療内科クリニカルフェロー)

 前回は、アメリカでは様々な医療保険が用意されており、プランごとに医療費の自己負担率(coinsurance)が異なることを説明いたしました。今回は、その自己負担率に注目します。
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2010年11月05日

アメリカの医療保険の不思議 Vol.1

〜あなたの医療保険、自分で選べますか?〜


永松聡一郎
(ミネソタ大学呼吸器内科/集中治療内科クリニカルフェロー)

 アメリカの医療保険というと、皆様はどのようなことをご存知でしょうか? 5000万人、つまりアメリカ国民の6人に1人が医療保険を持っていないということや[1]、仮に医療保険を持っていたとしても、高額な医療費のために家財を丸ごと売って自己破産せざるを得ないこともあるという不幸話を、耳にされた方も多いかと思います。なぜそのような状況が放置され続けてきたのでしょうか?


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2010年07月27日

ホスピタリストに託された使命―医療の質の向上


永松聡一郎
(ミネソタ大学呼吸器内科/
集中治療内科クリニカルフェロー)



 前回の記事では、1990年代から2000年代にかけて、入院患者の診療だけを担当する医師たち―ホスピタリスト(hospitalist)―が誕生した背景を紹介しました。そして、マネージドケアの浸透と、医師が病棟に常在することを求める病院のニーズとが、ホスピタリストを誕生させる一因になったことを説明しました。

 それを受けて今回は、ホスピタリストが病院の中で医療の質を向上させるために、どのようなリーダーシップを発揮しているかをレポートしていきます。
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2010年05月01日

医師の労働時間を考える Vol.3

ホスピタリストの誕生― 彼らは急性期病院の救世主になるか?

永松聡一郎
(ミネソタ大学呼吸器内科/
集中治療内科クリニカルフェロー)



 これまでの連載では、1984年のリビー・ジオン事件をきっかけとして、2003年にACGME(Accreditation Council for Graduate Medical Education:卒後医学教育認定評議会)がレジデントの労働時間を週80時間以内に規制するまでの過程を解説してきました。

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2009年12月19日

医師の労働時間を考える Vol.2 

「すべてはリビーの死から始まった」

永松聡一郎
(ミネソタ大学呼吸器内科/
集中治療内科クリニカルフェロー)


 前回のブログでは、2003年から米国のレジデント(研修医)の労働時間が最長週80時間に制限されている様子をお伝えしました。今回は、労働時間をそのように制限するに至った歴史的経緯を解説したいと思います。続きを読む

2009年10月08日

医師の労働時間を考える Vol.1

“80-hour rule”―研修医の労働時間は週80時間以内

永松聡一郎
(ミネソタ大学呼吸器内科/
集中治療内科クリニカルフェロー)



 私は2004年に渡米し、ミネソタ大学で内科のレジデンシーを修了、現在は同大学呼吸器内科・集中治療内科のクリニカルフェローをしています。大学では、医療全般、とりわけ集中治療における医療の質を向上させる(quality improvement)プロジェクトに携わっています。続きを読む